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≪取扱作品≫
・長編『宇田川社警護部特殊警護課K班 -再試行&再生&再利用-』
・短編集『それはつめたくてあたたかいもの』

2014年09月19日

なんちゃって裏社会パロディ『死炉苦炉』

「ちーちゃんには言ったっけか、俺が桜井組に来る前の話」
 ある麗らかな日の午後、桜井組の所有する雑居ビルの屋上で煙草を吸いながら休憩していた冴夏は、隣で空を眺める異散に不意にそんな質問を投げかけた。
『聞いたことない』
 視線を空から手元の携帯端末に移した異散は、そこに文字を入力し音声出力させて冴夏の問いに答える。
『前に教えてくれたのは、目が見えない理由だった』
 異散の言葉に、あぁそうだっけ、と頷いた冴夏は、それまで吸っていた煙草の火を消した。
「この際だから言っちゃうけどさー。俺、裏の業界じゃあちょっと有名な家の人間なんだよね」
 知ってる? クリーニング一木≠チて通り名ーーと、苦笑いを浮かべながらに話す。
「だっさい通り名だけど、シミ一つ残さないくらい綺麗に死体を処理する暗殺のやり口から、そんな風に呼ばれてるんだって。んで、俺ってばそこの長男として産まれちゃったもんだから、跡取りとして、それはもう、ちーちゃんには聞かせられないくらいえげつないあれこれを教え込まれてきたわけだよ」
 相槌も打たず話を聞いている異散に冴夏は、だけどね、と言う。
「俺にはそういうの向いてないなーと思って、家出しちゃったんだ。死に物狂いで家を飛び出して、それからいろいろあって、桜井組に拾われて。そんでちーちゃんに会えた。あ、あといーくんも。結局カタギにはなれなかったけど、一木に居た時には経験できなかったことばっかりで、楽しい毎日だなぁって――この毎日を大事にしたいって、初めて思えたんだ」
 でも。
 冴夏は深いため息を吐き、先ほどまで異散が眺めていた空を仰ぐ。
「そんなの、一木の家が許すはずなかった。一木は俺を家に連れ戻す為に、何度も何度も刺客を送り込んでくるようになった」

『大体わかった』
 話し終えた冴夏に、異散は端的に言う。
 それと同時に、屋上に繋がる扉が開く音がした。
 現れたのは、見るからに裏世界に属していると分かる屈強な男達ばかり。
「あっちゃー、もう見つかったか。良い逃げ場所だと思ったんだけどなー」
 赤い髪をくしゃくしゃにしながら言う冴夏。
『どうして街中で突然逃げる事になったのか分からないままコナツと逃げてきたけど、それがコナツの所為なんだって、よくわかった』
 呑気な事を言う冴夏の隣で淡々と文字を入力し音声出力する異散だが、明らかに尋常でない怒気を孕んでいることくらいは冴夏にも察知できた。
 そう、二人はこの屋上に辿り着くまで、街中をさんざ走りまわっていたのである。
 一木の家の連中をいち早く見つけた冴夏が、異散の手を取り走り出した。
 状況が一切理解できないまま、それでも追い掛けてくる連中に捕まってはいけない事だけは分かった異散は、桜井組の所有するビルであれば他の建物よりいくらか安全なのでは――という冴夏の提案にノータイムで乗っかり、息を切らして屋上に上って来た。だというのに、それが徒労に終わったのだから、それは異散でなくてもキレる。
『何をシリアスな雰囲気を醸し出して語り出したかと思ったら……。全部コナツの所為だ』
「だって! だって仕方ないじゃん! 俺の所為じゃないよ! 俺悪くない! 俺を連れ戻そうと毎度毎度刺客を送り込む向こうが悪いんだってば!」
『うるさい黙れボケナス』
 器用にビルとビルとを飛び移り刺客から逃げながら、二人は話を続ける。
『イツキの助言に従って、今日は家に居れば良かったのに』
「でも、ちーちゃん一人に仕事を任せるわけにもいかないじゃん。世の中物騒なんだから」
『物騒の中心にいる奴が何を抜け抜けと』
「あ、でもねちーちゃん。俺だって無策ってわけじゃないんだよ。前に一度、宇田川社さんに護衛を頼んだ事はあったんだよ」
『誰に頼んだの?』
「いつもロケラン持ち歩いてる三国さんって女の人」
『それで?』
「『ウチの三国じゃ護衛にならないだろうから無理』って断られた」
『だろうね』
 全力疾走で駆け抜けながら、異散はちらりと背後を見る。
『それより、何だかさっきより数が増えてない?』
「そうだね」
『コナツが目的なら、私は離脱しても良いはず……』
「文句垂れつつ一緒に逃げてくれるちーちゃん、俺は大好きだぜ!」
『今そういう話してない』



終わり

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……というわけで、なんちゃって裏社会パロディ『死炉苦炉』第二弾でした。
診断メーカーで、
一木冴夏 暗殺者の一族だったがその風習に嫌気が差して家出。一般社会に溶け込んでいたところだったが、そこへかつての一族からの刺客が迫る  口癖は「俺のせいじゃないよ!」  http://shindanmaker.com/389754
なんて結果が出まして、そこから膨らませてついったにちょこちょこ書いたのを加筆修正した次第であります。

冴夏さんの家が暗殺一族とかいうのは『死炉苦炉』内だけの設定ということで。
『死炉苦炉』の世界観だと、いつぞや書いてた『K』とリンクし易いので、ちらほら名前を出したりしてます。
冴夏さんからの護衛を断ったのは、部長か、或いはその相棒です。

またぞろ自己満足の記事に、ここまでお付き合いくださりありがとうございましたー!
posted by 爽川みつく at 21:46| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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