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≪取扱作品≫
・長編『宇田川社警護部特殊警護課K班 -再試行&再生&再利用-』
・短編集『それはつめたくてあたたかいもの』

2014年05月05日

まったりGWライフ

「ひっ……、や、ぁ……!」
 迫りくるそれに、思わず顔を覆いたくなる。
 しかし双子はそんな僕の手をいとも簡単に抑えつけ、言う。
「サクライはこれが好きなのか」
「サクライはここが弱いのか?」
 わざと声のトーンを落として、耳元で双子は囁く。
「や、やめ……! それ、やだ……」
 僕の必死の抵抗は虚しいまでに意味がなく、双子はにやりと嫌な笑みを浮かべた。
「もっと顔を見せてくれ」
「隠さないでくれないか」
「なぁ、サクライ」
「ねぇ、サクライ」
「――っ」
 
 どうして僕がこんな情けない声をあげるに至ったのかというと、事の発端はつい2時間ほど前の事である。

「おいサクライ。お前これから暇か?」
「無論暇だろうな。僕らと一緒に来い」

 そんな問答無用の誘い文句とも言えないお誘いを頂いて、僕こと桜井樹は居上兄弟に連行……もとい、ご自宅に招待されたのだった。
 一体彼らは何をする気なのだろう。
 これは、僕じゃなくとも誰だって疑問に思う。あの双子が誰かを自宅に招待するだけでも驚きだけど、その相手が絶賛敵対関係にある僕だっていうんだから、何ていうか、これは天変地異の前触れなんじゃないかと僕は考えている。明日くらいにでも世界は滅びてしまうんじゃないだろうか、とか。
「この部屋だ。さっさと入れ」
「もたつくな。さっさと入れ」
 途中で僕が逃げ出さないようにか、双子は僕の両隣に僕を挟むようにして立ち、僕の肩を掴んでここ――居上兄弟のご立派な自宅へと連れてきた。そうしてこれまたご立派なドアの前に立たされ、双子はこの部屋に入れと言うのだった。
「ええと……、この部屋で何を……?」
 勝手に暇認定を受けて連れてこられたは良いが、その目的を僕は聞いていなかった。
 殴り合いの喧嘩になるような事を考えているのであれば、わざわざ自宅になど連れてこないだろう。自宅に呼ぶという事は、とりあえずひどい怪我を負うような展開にはなるまいと思って、僕もいつもよりは警戒のレベルを下げていたのだが。
「良いから。さっさと中に入れ」
「中に入れば否が応でも分かる」
 双子は目的を言う気はないらしい。
 今日はどんな嫌がらせをしてくるのだろうと、半分諦め、もう半分は覚悟を決めて、僕はそのご立派なドアを開けた。
「暗っ?!」
 そう、部屋の中は真っ暗闇だったのだ。カーテンを閉めただけではこの暗闇は作り出せない――きっと何か術を使ってこの空間を作り上げているはずだ。
 しかしそうなってくると、いよいよもって双子がこの部屋で何をするつもりなのかが分からなくなってきた。この暗闇で、やっぱり僕を殴りまくるつもりなんじゃないだろうか。そうじゃなくとも、この暗闇であれば僕は碌な抵抗が出来ない。それに乗じて、何か仕掛けてくるんじゃ――
「良いから」
「入れって」
 端的にそう言うと、双子は同時に僕を部屋の中へと蹴飛ばした。
 ぱたんとドアを閉じられればあっという間に視界は奪われ、案の定僕は双子にされるがまま、担ぎあげられて、そして――
「……うん?」
 ソファーに座らせられた。
 そんじょそこらのソファーではない。ふっかふかのソファーだ。
「最近の現世は、本当に技術の発展が素晴らしい。僕らの頃とは大違いだ」
 言いながら、双子のどちらかが僕の右隣に座った。さすがにこの状況では、どちらかは見分けがつかない。
「そしてそれが丁度サクライの弱点らしいという情報を、僕らは耳にした」
 かちゃかちゃと、何か機械をいじる音がする。どうやらもう一人の方は何かの準備をしているようだ。
「安心しろサクライ。今日はお前に物理的な危害を加えるつもりはない」
「安心しろサクライ。今日はお前に精神的な危害をたっぷり与えてやる」
 あ、これはやばいやつだ。
 遅まきながらにそう確信した僕は、
「ぼ、僕、ちょっと急用を思い出して――」
逃げ出そうとして、
「逃げるな馬鹿」「逃げるな馬鹿」
と左右から同時に腕を掴まれ、強制的にソファーへと戻されてしまった。
 何をするつもりなのかと、今は動いていない心臓が、ばくばくと鼓動を打つ錯覚に陥る。
 しばらくすると、目の前がぼぅっと明るくなった。これは、テレビの明かりだ。そうして、何やら制作会社のロゴが出る。
「……映画?」
「そうだ。今日はお前に、ホラー映画を観てもらう」
「サクライ、お前はホラーが苦手だそうだな……?」
 テレビの明かりを受けて薄ぼんやりと見えた双子の表情は、かつてなく凶悪な笑みだった。
「ぼ、ぼぼ僕がホラーが苦手? なななな何をででででまかせ言ってるんだか分からないですねねねね」
 どこからその情報を掴んできたのか分からないが、しかしここで怯えてしまったら僕の負けが確定する。この双子に負けるのは許せなくて、僕はめいっぱいに虚勢を張って出た。
「お前、本当分かりやすいな」
「馬鹿みたいに分かりやすい」
「…………」

「ひっ……、や、ぁ……!」
 そうして、現在に至るというわけだ。
 双子の選んできた映画というのが、僕がかつて経験した事のないような恐怖を与える類のもので、僕はそんな情けない声を上げてしまっていた。 怖すぎて画面を観ていられないから顔を覆ってしまいたいのに、双子は僕の両腕をがっちり掴んで放さない。
「サクライはこれが好きなのか」
「サクライはここが弱いのか?」
 わざと声のトーンを落として、耳元で双子は囁く。それが半端なく恐怖を煽って仕方がなかった。
「や、やめ……! それ、やだ……」
「もっと顔を見せてくれ」
「隠さないでくれないか」
 画面の中で、小さな物音がした。主人公が即座に振り返る。誰も居ない。BGMがどんどん盛り上がっていく。
 ああ駄目だ、もうすぐすさまじく怖いシーンがくる。
 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!
「なぁ、サクライ」
「ねぇ、サクライ」
「――っ、もうホラー系苦手なの認めますから! 認めますからこれ観るのやめましょうよぎゃあああああああああ!!!!!!」
 実質の敗北宣言だった。
 もう限界ぎりぎりだったのだ。このままでは僕の精神状態に異常を来す気さえした。
「何を馬鹿な事を言っているんだ、サクライ」
「映画は最後まで観るのが常識だ、サクライ」
 しかし双子は、僕の敗北宣言を聞いても尚、映画鑑賞を続ける気満々だった。いや、或いは敗北宣言を聞いたからかもしれない。

 恰好のネタを見つけた双子が、その後、定期的に僕を強制連行してホラー映画鑑賞会を始めるようになるのは、避けようのない未来であるように感じた。


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……ということで、(双子は)まったり(サクライをいじめて楽しむという、樹くんにとっては)G(拷問の様な)W(約一週間に及ぶ)ライフ(激減の日々)でした。
GWだねーってところから妄想して、ついったで書いたネタから膨らませた感じです。
結果的にGWは微塵にも関係していませんが、まぁいっか☆
双子と樹くんについてですが、何かもう一周回ってお前ら実は仲良いんじゃないかと思うようになってきました。
案外、和解する日だって近いんじゃねぇのー(適当)
posted by 爽川みつく at 22:29| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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