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≪取扱作品≫
・長編『宇田川社警護部特殊警護課K班 -再試行&再生&再利用-』
・短編集『それはつめたくてあたたかいもの』

2008年07月19日

修復不能B

―――/――――

放課後、僕はそそくさと校舎を出た。
彼女の楽しみにしている物を探しに。

話の流れからして、僕が彼女に何かを与えるという形なんだろうけど、全く検討がつかない。
僕の事だ、きっと病気の事は周りに隠している。
彼女が知るはずもない。
朝の彼女との会話だって、あてずっぽうだったんだ。

そうなると僕の記憶に頼るしかない。
殆ど残っていない記憶を、僕は必死に探る。
脳みそに手を突っ込んで引っ掻き回すくらい、必死に。
思い出そうと、必死になる。

そして、思い出した。
夕焼けで話す、幼い僕らの姿を。
そうだ、僕は彼女に――――


 「ってぇ。オイ、なんだお前」
走り出した僕は、思わず人にぶつかった。

 「邪魔」
こっちは急いでるんだ。
例えぶつかってしまった相手がどこからどう見ても不良だったとしても、構ってる暇なんて無い。

さっさとこの場を去ろうと走り出した、その時だった。
左頬に、強烈な痛みが襲う。
思わず、地面に倒れた。

 「誰が邪魔だって? 手前、誰に口きいてんだコラ」
 「お前だよ。聞こえなかったのか? 邪魔だよ、邪魔」

早く行かなきゃならないのに。

 「お前、むかつくな」
それが、僕に聞こえた最後の言葉。
僕は無意味な暴力に、ただただ耐えるだけだった。
こんな時、いままでの僕だったらどんな事を思うのだろうと、考えながら。

―――――――

人間は死ぬ前に一度だけ、まるでその症状が嘘だったかのように回復する事があるらしい。
それを何と呼ぶかは、やっぱり忘れたけど。
でも、きっと今の僕は、まさにその状態だ。

何もかもが鮮明で。
忘れてきたはずの『僕』が戻ってくる。
こんな病気になる前、考えていた事。
病気になってから、考えた事。

全部、わかる。
感情が、心が、『僕』という存在が。
そうだ、やっぱり僕は怖かったんだ。
崩壊していく僕が。カラッポになる僕が。

 「ほた、る…………」

今だけ思い出せる、幼馴染みの名前。
なぁ、蛍。お前になら分かるかな。
今、僕のこの感情を、何と呼ぶのか。

posted by 爽川みつく at 22:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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