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≪取扱作品≫
・長編『宇田川社警護部特殊警護課K班 -再試行&再生&再利用-』
・短編集『それはつめたくてあたたかいもの』

2008年07月19日

修復不能@

※以前に書いた内容を完全に忘れた為、前回までの2話を削除して書き直します。
内容はきっとほとんど変わってません。


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「もう治る事は無いでしょう」

面と向かって、はっきりと冷酷に、医者はそう言った。
いや、面と向かって、というのはこの場合は当てはまらない。
そんな死刑宣告を、誰が本人(ぼく)の目の前で言うものか。

第一、僕は今、盗み聞きをしてる立場なんだ。向き合えるはずがない。
だから今の言葉は、あくまでも僕の父と母に向けてのものである。

 「………あと、どれくらいなんですか?」
母は薄情にも息子の余命を尋ねる。
 「良くて二週間。それ以上は分かりません」
なんだそれ。
あれだけ窮屈な検査をやらせておいて、こんなにも早く諦めちゃうのかよ。
喉まで出かかった言葉を押し込んで、僕は医者と両親の会話に聞き入る。

 「本当に、もう方法はないんですか…?」
珍しく震えている父の声に、僕は驚く。
 「……はい。こちらとしても、何も手を打つ事が出来ないのが悔やまれます……」

辛そうな医者の声。
死に行く患者を、この医者は何人看取ってきたのだろう。
そしてその度、何を思うのだろう。

わからない。
今の僕には、もう。

 「いえ、先生には惺(さとる)の為にここまでしていただきました。それだけで、十分で……」
とうとう堪えきれなくなった母は、声をあげて泣き出した。
僕の為に母が涙を流したなんて、何年振りだろうか。

でも。

 「何で泣いてるんだよ、母さん……」
母が無く理由なんて、もう僕には分からない。
これから先、分かる事なんて永遠にありえない。

そう。
僕は病気にかかっている。

それはもう治らない病気。
残された時間は二週間。

二週間後の僕に、精神(こころ)はない。

 /―――――――

精神が消えていく。
心が死んでいく。
無に戻る。

言い方はなんでもいい。
僕の病気とは、つまりはそういう事だ。

心が無い人間は、ただの抜け殻。
『生きている』だけの器にすぎない。
そんなモノは死んだも同然だろう。

毎日、少しずつ死んでいく中で、両親は今まで以上に、否、今までに無い程、僕との会話に勤しんだ。
数秒後には忘れてしまいそうな脆い会話を、延々と続ける。

それはまるで、消えていく『僕』を確認しているみたいで。
気持ち悪い。
こんな感情さえ消えてしまうのかと思っているうちに、一週間が経っていた。
posted by 爽川みつく at 22:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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