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≪取扱作品≫
・長編『宇田川社警護部特殊警護課K班 -再試行&再生&再利用-』
・短編集『それはつめたくてあたたかいもの』

2008年07月19日

時は誰も待ってくれない

一気に更新しました、「修復不能」。
前に別所で書き上げたので、更新ペースが異常に早いのが分かります。
つか、ぶっちゃけ文芸部の原稿に使いました。
いや、でも中途半端で終わるよりは良いですよね!
そう。
終わりよければ全てよし、ですよ!
頑張った!
全部更新仕上げてからパソの電源が落ちたあたり、今日のパソ様は空気を読んでいらっしゃいます。

まぁそんな感じで5月分がようやく終了。
来月分のリクエストを受け付けます。
よろしければどうぞ。


いきなりこんな小説を4連続更新した理由なんて、ただ単に午前が部活で午後はひたすらに自堕落に過ごしてたものでして、ここに書ける程にネタがないだけでして。
ただそれだけ。

嗚呼、3連休の内の一日が、もう終わる………。
posted by 爽川みつく at 22:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

修復不能C

――――――/―

気が付くと、目の前に一人の女の子がいた。
 「あ……。起きた?」
 「うん、まぁ」

ゆっくりと身体を起こし、目の前の人物を確認する。
見覚えの無い子だ。一体誰なんだろう。

 「帰り道に血まみれの惺がいて、びっくりしたんだからね?」
 「そう、なんだ」

血まみれ? 僕が?
どこも痛くないのに?

 「不良にでも殴られたの? 本当、今日の惺は珍しい事ばっかりするね」
 「だから気のせいだって」
 「そうだね。惺は惺だもん。約束は、きちんと守ってくれたしね」
 「約束?」

 「うん。あたしの誕生日に、とっておきの景色を見せてあげるって。ずっと昔の約束だけど、この約束だけは破った事ないもんね、惺」
 「……………………」
 「今年は夕日かぁ。あ、確かこの約束した日も夕日が見えたよね」
 「……………………」
 「覚えてる? あの時、惺が何て言ったか」

覚えてるはずが無い。
僕は彼女が誰か、分からないんだから。
知らない人との思い出なんて、ある訳が無い。

だけど。
僕の口は、勝手に動き出した。

 「『僕はお金をかけたプレゼントを贈るつもりはない』だろ?」
 「そうそう。最初は何言い出すのかと思ったけど。でも、案外そっちの方が嬉しかったり」
 「今年は結構苦労したんだぜ?」
 「それだけ血まみれだもんね。本当、何してたの?」
 「とある大型犬の尻尾踏んだら噛み付かれた」
 「あはは。馬鹿じゃん」

 「でも、不思議と痛くないんだ」
 「うわ、それ重症だって。病院行った方良いよ」
 「いや。病院は、いらない」
 「そうなの…? まぁ、強制するつもりはないけど。いきなりぶっ倒れないでよ?」
 「まかせとけって」

 「ねぇ惺。来年はどんな景色を見せてくれるの?」
 「そんなの言ったら、楽しみが無くなるだろ? それに―――」

僕はもう、消えてしまうだろうから。

 「惺? 何あたしの肩によりかかってんの?」
 名前も知らない彼女の隣は、不思議と居心地が良くて。
 「やっぱり病院行く? 犬って以外と力あるんだよ?」

余計な血液が抜けた分、心が穏やかで。

 「ちょっと、聞いてる? 起きろー」

ゆっくりと、僕は。『僕』は。

 「ここで寝ちゃっても、あたし運べないからねー」

消えていく。消えていこう。

 「…………ねぇ? さ、とる……?」

さようなら。
ばいばい。
また明日。

思いつく限りの別れを告げて、『僕』はカラになる。



posted by 爽川みつく at 22:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

修復不能B

―――/――――

放課後、僕はそそくさと校舎を出た。
彼女の楽しみにしている物を探しに。

話の流れからして、僕が彼女に何かを与えるという形なんだろうけど、全く検討がつかない。
僕の事だ、きっと病気の事は周りに隠している。
彼女が知るはずもない。
朝の彼女との会話だって、あてずっぽうだったんだ。

そうなると僕の記憶に頼るしかない。
殆ど残っていない記憶を、僕は必死に探る。
脳みそに手を突っ込んで引っ掻き回すくらい、必死に。
思い出そうと、必死になる。

そして、思い出した。
夕焼けで話す、幼い僕らの姿を。
そうだ、僕は彼女に――――


 「ってぇ。オイ、なんだお前」
走り出した僕は、思わず人にぶつかった。

 「邪魔」
こっちは急いでるんだ。
例えぶつかってしまった相手がどこからどう見ても不良だったとしても、構ってる暇なんて無い。

さっさとこの場を去ろうと走り出した、その時だった。
左頬に、強烈な痛みが襲う。
思わず、地面に倒れた。

 「誰が邪魔だって? 手前、誰に口きいてんだコラ」
 「お前だよ。聞こえなかったのか? 邪魔だよ、邪魔」

早く行かなきゃならないのに。

 「お前、むかつくな」
それが、僕に聞こえた最後の言葉。
僕は無意味な暴力に、ただただ耐えるだけだった。
こんな時、いままでの僕だったらどんな事を思うのだろうと、考えながら。

―――――――

人間は死ぬ前に一度だけ、まるでその症状が嘘だったかのように回復する事があるらしい。
それを何と呼ぶかは、やっぱり忘れたけど。
でも、きっと今の僕は、まさにその状態だ。

何もかもが鮮明で。
忘れてきたはずの『僕』が戻ってくる。
こんな病気になる前、考えていた事。
病気になってから、考えた事。

全部、わかる。
感情が、心が、『僕』という存在が。
そうだ、やっぱり僕は怖かったんだ。
崩壊していく僕が。カラッポになる僕が。

 「ほた、る…………」

今だけ思い出せる、幼馴染みの名前。
なぁ、蛍。お前になら分かるかな。
今、僕のこの感情を、何と呼ぶのか。

posted by 爽川みつく at 22:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

修復不能A

―/――――――

学校へ通うこと。
それは二週間前の僕が切実に望んだ事らしい。
今の僕には分からないけれど、きっと消えていく自分を家でじっくりと観察しているよりはマシだと考えたのだろう。

いつもの通学路さえもあやふやで、やっとの思いで学校に着いた時には、すでに始業三分前だった。

 「おはよう、惺」
 「あ……うん。おはよう」
一人の女子生徒が声をかけてきた。
ショートカットの黒い髪に、紺色の制服。
中学生に見えてしまうような幼い顔立ちだが、その短く改造された制服のスカートが、彼女が高校生である事をかろうじて証明している。

 「もう。こんな時間になるまで来ないから心配してたんだよ? 珍しいじゃん、惺が遅刻しそうになるなんて」
 「そうかな。いつもこんなんじゃないか?」
 「どうせまた、熱心に勉強なんてしてたんでしょ。惺、少しは休んだ方いいんじゃない?」
 「今日はたまたまだって。寄り道してたら遅くなった」

 「へぇ〜。今日の惺は珍しい事ばっかりするんだね」
 「気のせいだって」
 「そっか。ねぇ、それよりも惺」
 「ん? 何?」

名前も知らない彼女は、快活な笑顔で僕と会話する。
僕と彼女は、一体どんな関係なんだろうか。
友達? 幼馴染み? それとも恋人?

 「ほら、もうすぐアレじゃんか」
 「アレ?」
 「そう。あたし、すっごい楽しみにしてるんだからね」
 「あぁ。大丈夫。分かってるって」
 「本当に?」
 「本当だよ。僕が今まで嘘ついた事あった?」
 「…………………………………………………ない」

 「うん。その答えを聞いて、安心した。回答までの所要時間の長さはチャラにしておくよ」
 「約束なんだからね? 破ったら承知しないよ」
 「はいはい。ほら、先生来たよ。席に戻れって」

僕の言葉を聞き、慌てた様子で彼女は自分の席へと戻っていった。
担任が、一人ひとりの名前を呼んで出欠確認をする。

そして、ようやく分かった。
彼女の名前は皆本(みなもと)蛍(ほたる)というらしい。

 ――/―――――

思い出と呼ばれるモノは、どうやら心の中に積み上げられていくらしい。
僕の中の思い出は、もう殆ど残っていない。

楽しかった事も悲しかった事も怒った事も嬉しかった事も。
彼女の楽しみにしている事さえも、全部、心と共に消えていく。

僕の中の感情も、もう残り少ない。
それくらいの現実を確認できる『僕』が残っているのが、少し気に食わないけど。

それだって、まだ僕が生きている証拠だ。
今は、まだ。
死はきっと、すぐそこまで来ているとしても、まだ僕は『僕』を消す訳にはいかない。

死ぬ事は怖くない。
そもそも、怖いなんて感じないんだ。
「死にたくない」なんて、口が裂けても言えない。

じゃあどうして僕は今、こんなにも消える事を嫌うのか。
答えは簡単だ。

あんなに輝く彼女の顔を見たら、きっと、誰だってこんな気持ちになるさ。
posted by 爽川みつく at 22:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

修復不能@

※以前に書いた内容を完全に忘れた為、前回までの2話を削除して書き直します。
内容はきっとほとんど変わってません。


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「もう治る事は無いでしょう」

面と向かって、はっきりと冷酷に、医者はそう言った。
いや、面と向かって、というのはこの場合は当てはまらない。
そんな死刑宣告を、誰が本人(ぼく)の目の前で言うものか。

第一、僕は今、盗み聞きをしてる立場なんだ。向き合えるはずがない。
だから今の言葉は、あくまでも僕の父と母に向けてのものである。

 「………あと、どれくらいなんですか?」
母は薄情にも息子の余命を尋ねる。
 「良くて二週間。それ以上は分かりません」
なんだそれ。
あれだけ窮屈な検査をやらせておいて、こんなにも早く諦めちゃうのかよ。
喉まで出かかった言葉を押し込んで、僕は医者と両親の会話に聞き入る。

 「本当に、もう方法はないんですか…?」
珍しく震えている父の声に、僕は驚く。
 「……はい。こちらとしても、何も手を打つ事が出来ないのが悔やまれます……」

辛そうな医者の声。
死に行く患者を、この医者は何人看取ってきたのだろう。
そしてその度、何を思うのだろう。

わからない。
今の僕には、もう。

 「いえ、先生には惺(さとる)の為にここまでしていただきました。それだけで、十分で……」
とうとう堪えきれなくなった母は、声をあげて泣き出した。
僕の為に母が涙を流したなんて、何年振りだろうか。

でも。

 「何で泣いてるんだよ、母さん……」
母が無く理由なんて、もう僕には分からない。
これから先、分かる事なんて永遠にありえない。

そう。
僕は病気にかかっている。

それはもう治らない病気。
残された時間は二週間。

二週間後の僕に、精神(こころ)はない。

 /―――――――

精神が消えていく。
心が死んでいく。
無に戻る。

言い方はなんでもいい。
僕の病気とは、つまりはそういう事だ。

心が無い人間は、ただの抜け殻。
『生きている』だけの器にすぎない。
そんなモノは死んだも同然だろう。

毎日、少しずつ死んでいく中で、両親は今まで以上に、否、今までに無い程、僕との会話に勤しんだ。
数秒後には忘れてしまいそうな脆い会話を、延々と続ける。

それはまるで、消えていく『僕』を確認しているみたいで。
気持ち悪い。
こんな感情さえ消えてしまうのかと思っているうちに、一週間が経っていた。
posted by 爽川みつく at 22:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする